生まれてこの方、美術展なんて子供の頃親に連れられて何度か行ったぐらい(何も覚えていない)だったが、オタクに激推しされた「マティス 自由なフォルム(新国立美術館)」を見たのがきっかけで、多少興味を持つようになった。マティスはなんとなく名前を聞いたことはあるけど…ぐらいで、よく思い起こせば実家のリビングにポスターがあったなあ、という程度だったが、画家の一生を作品の変遷と共にたどる体験は非常に面白かった。何よりも、生で見る油絵の立体感は、普段"印刷"された紙メディアに慣れきってしまった自分の目にはひどく衝撃的だった。 そんな中、「デ・キリコ展」が開催されるという情報を得た。デ・キリコといえば~~~というウンチクはあいにく持ち合わせいないのだが、「通りの神秘と憂鬱 / Melancholy and Mystery of a Street」という絵が中学か高校の美術の教科書に載っており、模写の授業で題材にしたことだけは覚えていた。残念ながらその絵自体は今回展示されていないようだが、先のオタクに問えば「国民の義務。行け。」とのことなので、東京都美術館に赴いた。 デ・キリコの絵は「通りの神秘と~」しか知らなかったので、会場で目にするものは全て初見の絵であり、同作品にも見られるデ・キリコの作風のことを形而上絵画と呼ばれることすら会場の説明文で知った。そんな状態で目に飛び込んでくる圧倒的な物力の作品たちに少々面食らいながらも、2時間弱ほどで会場を一周。やはり好きだな、というのが感想。先にも述べたとおり前提知識が全くないので高尚な感想文を紡ぐことはできないのが非常に残念だが、やっぱり好きらしい。特に印象に残っているのが、マヌカンを主題としたシリーズ。デ・キリコの絵には共通してえも言われぬ不気味さを感じるが、ノッペラボーがドデカく主題になっているこれらは群を抜いていると感じる。好きなんだけど、部屋に飾りたいかと言われたらちょっと躊躇ってしまう…そんな感覚(でも飾ってみたい)。 さて、自分はこの絵のどこに惹かれるのかを少し考えてみる。自分の人生において一番芸術に近しい行為といえばカメラ(写真)なので、まずはどんな写真が好きだったかを思い出す。例によって写真史や写真家には明るくないので、好きな作品や作家をパッと言えるわけではないのだが、どちらかといえば水平がバシッと取れた